噛むと痛い歯は自然に治る?原因と対処法について
2024/06/19
こんにちは、下高井戸の歯医者、カズデンタルクリニックです。
「虫歯や歯周病ではないのに、歯が痛い」
「普段は何ともないのに、疲れたときだけ噛むと歯が痛む」
そんな経験をされたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
実は、一言で歯の痛みといってもいろんな種類があり、大きくは、何もしなくてもズキズキと痛む「自発痛」、歯に何か刺激を受けたときにだけ痛む「誘発痛」に分類されます。
この誘発痛のうち、特に噛んだ時に感じる痛みを「咬合痛」といいますが、咬合痛には耐え難いほどの激痛から、ちょっとした違和感程度のものまでさまざまありますので、その程度によっては放置してしまいがちです。
そこで本日は、この「噛むと痛い(咬合痛)」について詳しくご紹介していきたいと思います。
考えられる炎症は主に3つ!
痛みを感じるということは歯や歯周組織に何かしらの炎症が起きている状態といえますが、咬合痛の場合、主に下記の3つの炎症が考えられます。
根尖性歯周炎
根尖性歯周炎とは、歯の中の神経の入っている管(根管)が何らかの原因で細菌に感染してしまい、その細菌が歯の根の先から出て根の周りの組織(歯根膜や骨など)に入ってしまうことで炎症が起きてしまった状態を言います。
炎症によって歯の根の先に膿の袋(歯根嚢胞)ができるため、溜まった膿によって根の周辺が圧迫され、噛むと痛いといった症状が現れるようになります。
根尖性歯周炎には、比較的症状が穏やかな「慢性根尖性歯周炎」と、激しい痛みを伴う「急性根尖性歯周炎」の2種類がありますが、慢性根尖性歯周炎を放置していると急性根尖性歯周炎へと変化してしまう場合もあります。
いずれにしても根尖性歯周炎は自然治癒することはありませんので、何かしらの治療が必要となります。
主な症状
【慢性の場合】
疲れたときに歯肉が腫れる
歯肉から膿が出てくる
噛むと痛い
歯茎にデキモノ(サイナストラクト(フィステル))ができる
歯が浮いた感じやぐらつきがある
【急性の場合】
何もしなくてもズキズキ痛い
顔がパンパンに腫れる
歯がぐらぐらしている
原因
根管治療後の再感染
根尖性歯周炎のほとんどは、抜髄治療(根管治療)を行った後の歯に起こります。
根管治療で取り残してしまった細菌や、治療後の材料の劣化で歯と被せ物との境目などから侵入してきた細菌によって、根の周りの組織に炎症が起きてしまうのです。
この場合は、再度根管治療を行うことで痛みや炎症を抑えることが出来ます。
【感染根管再治療(再根管治療)について】
「ちゃんと治療した歯なのに、どうしてまた悪くなってしまうの?」
そう思われる方もきっと多いと思います。
ですが、根管治療は歯科治療の中でも特に難しく、根気のいる治療。東京医科歯科大学による調査によると、日本の保険治療での根管治療の成功率は30%~50%とのデータもあるのです。
治療後の再感染を防ぐには、治療中は途中で放置したりせず、なるべく間をあけずにきちんと治療に通うこと。また、治療後の被せ物になるべく劣化しにくい精度の高い素材を使用することがポイントになります。
深い虫歯
虫歯を放置して進行してしまうと、虫歯菌が歯の神経にまで到達してしまいます。
神経に達した虫歯は激しい痛みを感じるようになりますが、それを更に放置した場合、神経が壊死して痛みを感じなくなります。
そうなると、根の中で虫歯はさらに進行し、細菌がどんどん増え、根の先から出て根の周りの組織に侵入してしまうことで炎症を引き起こします。
歯の根っこの神経まで侵された虫歯(C4)の場合、ほとんどのケースが抜歯となってしまいます。
早い段階で治療をすれば歯を残せるケースもありますので、なるべく早めのご来院をおススメします。
歯根破折
歯根破折とは、歯の根が割れてしまうことを言います。
歯が割れてしまうと、割れた隙間から細菌が侵入して増殖し、周囲の組織を破壊して根尖性歯周炎を引き起こしてしまいます。
特に神経を取った歯は、歯に栄養分が行きわたらずに脆くなっているため、歯根破折を起こしやすく、歯ぎしりや食いしばり等で割れてしまうこともあります。
また、根管治療後に被せ物の土台として金属の土台(メタルコア)を使用した場合も、金属の土台は硬すぎて弾性がほとんどないため、歯をかみしめた際などに負担がかかって歯が折れてしまうこが多くあります。
歯の破折の程度が小さい場合は、根管治療と歯の接着によって歯を残せる可能性もありますが、長期間放置されていた場合や大きく割れている場合などは抜歯が必要となります。
歯根膜炎
歯根膜とは、歯と顎の骨(歯槽骨)の間にある膜のようなもので、噛んだ時にかかる力を吸収・緩和するクッションのような役割を果たしている歯周組織です。
歯根膜炎は、この歯根膜が細菌に感染したり、強い力が加わるなどして炎症を起こした状態で、噛むと痛んだり歯が浮いたような違和感を感じたりします。
主な症状
噛んだり叩いたりすると痛む
歯が浮いた感じがする
歯の根元の歯茎を押すと痛む
あごの下のリンパ節が腫れて痛む
頭痛、発熱がある
原因
歯根膜炎の原因は、細菌感染に由来するものと、細菌感染に由来しないものの2つに分けられます。
細菌感染に由来するものの場合、前途の根尖性歯周炎と同じような原因の他、歯周病によっても引き起こされます。
また、細菌感染に由来しないものの場合、打撲や咬合性外傷が挙げられます。
歯周病
歯周病菌が歯根膜にまで感染することで、歯根膜炎を引き起こします。
歯周病は、初期の段階では自覚症状はほとんどありませんが、「押すと違和感がある」「歯が浮いたような感じがする」といった場合は歯根膜炎になっている可能性があり、ある程度進行した状態である可能性が高くなります。
歯周病の治療は、一般的な治療の場合どうしても通院回数が多くかかってしまうため、途中で通院をやめてしまったりしがちですが、治療を中断してしまうと症状が進行してしまい、より多くの治療が必要になってしまいます。
打撲
歯に急激に強い力が加わると、歯根膜の一部が伸びたりちぎれたりして炎症を起こし、歯根膜炎を引き起こします。
痛みが弱い場合や、歯が浮く程度の違和感であれば、その歯をあまり使わないようにしながら1週間くらい安静を保つことで自然に治りますが、加わった力が強いと、歯の神経への血行が途絶えて神経が死んでしまい、根の中で細菌が繁殖して根の先に膿が溜まるようになります。
その場合は、根管治療により根の中の細菌を取り除く必要があります。
咬合性外傷
咬合性外傷とは、噛み合わせの力がかかることにより生じる炎症のことです。
何らかの原因で、歯を支える歯茎や骨などの周囲の組織が受け止められないほどの強い力を受けることで、歯周組織が破壊されてしまう病変を言い、その原因によって一次性咬合性外傷と二次性咬合性外傷に分けられます。
【一次性咬合性外傷】
歯周病になっていない健康な歯周組織に、過度の力が加わることで起こる外傷です。
主な原因としては、歯ぎしりや食いしばり、また、噛み合わせの高い被せ物により特定の歯に集中して強い力がかかってしまうことなどが挙げられます。
一次性咬合性外傷の場合、噛み合わせの調整や、歯ぎしり食いしばりによるダメージを軽減するためのマウスピースの作製などが治療法となります。
【二次性咬合性外傷】
すでに歯周病の症状が見られる歯に、噛む力が加わることで起こる外傷です。
歯周組織がしっかりとしていれば何の問題もない噛み合わせであっても、歯周病で歯を支えている歯槽骨が少なくなると、正常な噛む力でも、その力をきちんと受け止めることが出来なくなってしまいます。
その結果、噛んだ時に歯が大きく動いたり、痛みが出たりするようになり、歯周組織を更に破壊してしまいます。
二次性咬合性外傷の場合、歯周病の治療が必須となります。
上顎洞炎(じょうがくどうえん)
上顎洞とは、上あご部分(鼻の横、頬骨の奥、目の下あたり)に広がっている空洞で、上顎洞炎はこの上顎洞に何かしらの原因で炎症が起きた状態を言います。
上顎洞は上顎の奥歯の根の先ととても近い位置にあるため、上顎洞の粘膜が炎症を起こすと、歯根膜にも影響を及ぼしてしまうのです。
上顎洞炎には、蓄膿症などの鼻性の原因によって炎症が起きる上顎洞炎の他、歯が原因となって炎症が起きる歯性上顎洞炎があります。
【歯性上顎洞炎とは】
上顎の奥歯の虫歯や歯周病が進んで歯の根の先にまで菌が侵襲すると、その菌が近くにある上顎洞にまで達してしまい、上顎洞炎を引き起こします。
鼻性の上顎洞炎は両側の上顎洞に炎症を起こしますが、歯性の場合、原因になる歯のある側(片側)だけが炎症を起こすのが特徴です。
主な症状
上顎洞炎になると上顎洞内に膿が溜まりますので、鼻づまりや頭痛や頭部の圧迫感などといった蓄膿症の症状が現れます。
目の奥の違和感や鼻づまり
押すと痛む
頭痛、発熱、倦怠感など
治療法
まずは上顎洞が原因か、歯が原因かの判断が必要です。
歯が原因の場合、まずその原因となっている歯を特定することが重要となります。
疑わしい歯が複数あるケースも多くありますので、レントゲンを撮って治療すべき個所を判断し、必要に応じて虫歯の治療や根管治療、歯周病の治療などで感染源の除去を行います。
また、鼻性の上顎洞炎によるものである場合には、耳鼻科の受診が必要になります。
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